仕事を失うことは、
生活面での不安をもたらすのと同時に、精神面でも大きな影響が出ます。
今日はその、精神面での影響についてお話していきます。
仕事を失った。
そう一言で言っても、
病気やケガなどの健康上の問題、
子どもや家族を優先するための選択、
リストラや人間関係悪化などの物理的問題、
時代の変化や職業そのものへの需要の減少、
様々な理由があると思います。
仕事を失うということは人生の目標を失うことだと言われる方も多く、仕事というのは自分の生活や人生と深く結びついています。
社会での自分の役割を感じることで、「自分は社会の役に立っている」「自分は社会に受け入れられている」という満足感や充実感をもらっていたことに、仕事を失ってみて初めて気がつくこともよく起こります。
アイデンティティクライシスとは?
失ったことに対して、自分の中で心から納得できていれば深刻なグリーフに進まないかもしれませんが、自分としてはまだ続けたかったり、やりたいことがある上での断念だったり、それがある日突然に起こったりすると、悲しみや虚しさや怒りなどの色々な感情が次々と心の中に渦巻いたり、現実否認や感情の抑圧などをして自分の気持ちを避けたり転換したり、と混乱した状況が続くという方はとても多いですし、それはある意味当たり前のことです。
ですが、もし。
その状態がずっと続いているとするなら。。。
それはもしかすると、あなたの中でアイデンティティクライシスが起こっているのかもしれません。
アイデンティティクライシスとは自己同一性の危機、
つまり
自分は何者でこういう人間という自己認識、
自分が周りに受け入れられている受容感覚、
が自分の中で崩壊し、喪失した状態を言います。
自分がやっていた仕事に対して誇りとやりがいを持つことは、とても良いことだと思います。
ただ、その仕事が「あなた自身の価値そのもの」と強く繋がっていると、仕事を失った自分に価値を感じられなくなったり、価値のない自分は社会に必要とされていないという思い込みが起きたり、社会や世界との繋がりを絶たれてしまったように感じられたり、ということが起こるのです。
これがアイデンティティクライシスです。
つまり、アイデンティティクライシスとは、自分の存在に意味を感じられなくなり、自分という存在そのものの価値が、音を立てて崩れ落ちてしまうように感じてしまう状態になることなのです。
だからこそ、アイデンティティクライシスの状態に陥ると、「どうせ自分は何をやってもダメだ」と自己否定で自分を責めたり諦めたり、「自分はどうでもいい存在なんだ」と自尊感情や自己肯定感を欠いたりして、あなたの人生を絶望で満たしていく、ということも起きるのです。
仕事を失ったことでアイデンティティクライシスに陥るということはつまり、それほどあなたにとって仕事が、自分という人間を表現するとても大事なものになっていて、自分の価値を表すものの最たるものになっていたということです。
アイデンティティクライシスが起こると?
大事なものがあることはあなたの人生をとても豊かにします。
それでもその大事なものを、自分の一部ではなく自分の全てにしてしまうと、あなたは自分以外のものに影響され、人生のハンドルを外から見えている自分に握られてしまいます。
それは人からの評価によって自分の価値を図ろうとする、他人中心の生き方による影響もありますが、それはまた別の記事で詳しくお話しさせて頂くとして。。。
このアイデンティティクライシスが起こると、それに伴う自己否定や自責感情から「今までの自分が悪かった」「間違っていた」と自分の今までの全てを変えようと奮起しやすくなるということも起こりやすいのですが、一見前向きに見えるこの行動は実は逆に、このアイデンティティクライシスの状態をずっと長引かせてしまう原因にもなることも多いんです。
その理由は、アイデンティティクライシスによって今までの自分を変えて新しく生まれ変わろうとするのは、あなたの過去を否認して消そうとするより強い自己否定となるからです。
変えるのはあなたの過去ではないんです。
変えるのは、あなたの過去からの自分の認識や自分への思い込みです。
起こってしまった出来事に対して、反省をしたり振り返ることは大事です。
けれどそこに良し悪しは必要ないんです。
今のあなたに本当に必要なのは、自分に起こった出来事をまず自分のものとして受け入れていくことだとわたしは思います。
仕事に対して
あなたが費やしてきた時間
あなたが投資してきたお金
あなたが注いできた労力
あなたが培ってきた経験
あなたが持ち続けてきた情熱
そこに対して今でも残り続けている抑えた気持ちを、仕事や人との関係性の中で、あなた自身が受け入れていくことが大事です。
アイデンティティクライシスに必要なこと
しかし。
受け入れると一言で言っても、これがとても難しいんです。
それは、自分のことでありながらも受け入れることがつらかったり苦しい場合は特に、他の誰かの助けが必要になるからです。
人は自分だけでは自分の存在を確認できないと言われています。
某長髪先生も言うように、人という文字が人と人が支え合う形で作られているように、人はひとりでは生きていけない生き物です。
だからこそ人は大きく転んだ時ほど、自分からの支えと人からの支えの両方が必要なのです。
誰かにしっかりと聞いてもらう。
そうすることであなたが自覚していない本音の気持ちに、気がつくことができます。
誰かにゆっくりと共に居てもらう。
そうすることで自分を分かってもらえた、という心の安心感を感じることができます。
傷ついた時こそ、ひとりでその時間を耐えるのではなく、人と繋がりに行くことであなたの自己肯定感は再び育まれて回復していきます。
けれどそこには勇気が必要です。
頼ったら迷惑をかけるかもしれない。
弱みを見せるのが恥ずかしい。
今さら心の中を見せたところで意味はない
そんな風に心の傷を見せることへの抵抗が起きるかもしれません。
ですが、勇気を持ち自分のために行動した人だけが、自分の固まったままの世界を変えていくことができるとわたしは思います。
あなたが自分のための勇気を出した時、自分を受け入れるチカラを育み回復していくその過程を、精一杯サポートさせて頂きます!
安心してご相談くださいね。
アイデンティティクライシスについてはこちらで詳しくお話ししています。