病気はもちろんのこと、ケガで身体が思ように動かなくなったり、今までの生活を失うことで段々と心身に不調をきたすことは、
これからも当たり前に続くと思っていた日常が壊れるような、生死の不安だけでなく、これから先の自分の未来への不安というダメージをあなたの心に与えます。
日常を失うという喪失体験
自分の健康を失う。
自分の生活を失う。
自分の居場所を失う。
こうした今までの自分の日常を失う経験は、あなたにとって大きな喪失体験となります。
もっと言うならば、健康を失うということは、
わたしはできる、という自己重要感を失う。
自分の身体を思うように動かせる、という自己効力感を失う。
自分はここに居ていいという所属感を失う。
という今までの日常を失うという深いグリーフの痛みを抱える状態です。
病気やケガで昨日までの自分や、今までの生き方の自分を変えざるを得なくなってしまう体験をすると、どうしてこのような事になってしまったのか?と起こった事実を嘆いて受け入れられないことがほとんどではないかと思います。
自分の身体に感謝するということも、元の状態の自分に戻ることができてこそ、人はその感謝を実感しやすいからではないでしょうか。
もう今までの仕事で働けないかもしれない。
もう二度と元の生活に戻れないかもしれない。
そのような事実を突きつけられると、
今後は人に迷惑をかけて生きるかもしれない。
これから自分はどうやって生きていこう?
などの思いや不安が出てくるのは当然のことだとわたしは思います。
健康を失うという喪失体験だけでも十分辛い経験なのにその上さらに、
人の助けがないと生きていけない自分が、とても無価値なようで耐えられない。
という心理状態になり、自分が生きていることや自分の存在を責めてしまうという、大きな絶望感や無価値感を感じてしまうからです。
今までの成功や実績
未来に対して夢や希望
そうした今まで手に持っていたものと、これから手に入らない諦めざるを得ない未来との間で、
どうして自分がこんな目に遭わないといけないのか。
自分はもう自分ではなくなってしまったようでつらい。
という絶望や無価値感を感じることがその辛さや苦しみはどれほどのものか・・・
わたしには想像することしか出来ませんが、どれほどつらい事かと思います。
このように健康の喪失をキッカケに過剰な絶望感や無価値感や自己否定が強く起こるのは、
実はあなたの過去からの思い込みと繋がっていることが多いのです。
人生のプラスとマイナス
今の喪失がアイデンティティクライシスにまで向かってしまう場合は、この過去からの自分の思い込みの影響が強く起こっている可能性が高いとわたしは考えています。
例えば、
頑張っていないと自分には価値がない、とか
人に迷惑をかけるような自分は見捨てられる、など
健康を失った体験によって、健康な時は感じなくて済んだそれらの思い込みと直面し、自分自身に対して強い絶望感を感じたりや人生に対して無価値感を感じてしまう為です。
健康を失うというのはとてもつらい体験です。
ですが、その体験の痛みと共に、その過去からの思い込みや心の傷を自分で受け止め、受け入れていくことで心が癒され、今の自分の状態の心の見え方も少しずつ変わっていくことをわたしは自分からも人からも学んできました。
その過去からの思い込みを受け止めていく時に忘れてはいけないのが、自分のマイナスに目を向けている時ほど自分のプラスの部分(=大事なもの)を切り捨てていることがよく起こっているということです。

わたし達の人生は、マイナスだけでもプラスだけでも成立しませんよね。
本当に捨ててはいけないのは自分自身
あなたが自分のマイナス面だと思って切り捨ててきた部分は、本当は切り捨てる必要がない本音や感情という自分自身の大切な部分であることが多いものです。
頑張れないあなたがダメなのではありません。
病気やケガは、あなたが悪いから起こったのではありません。
人に頼ることは人に迷惑をかけるわけではないのです。
そもそも人はひとりでは生きていけません。
助け合い、支えあいながら生きるのは当たり前のことなのです。
だからこそ、どれだけ頑張っても今までの自分にはもう戻れないことを感じるような大きな喪失体験の時、それを乗り越えることはひとりでは無理なのです。
人は大きなことが起こった時ほど、人からの支えがないと乗り越えられません。
特に今までの自分が経験したことがないような喪失体験にあった時などの、自分で自分を応援するチカラが弱まっている時には、人や周りからの応援や支えの方を強くする必要があると私は考えています。
このつらい喪失体験はあなたが悪いからこの出来事が起きたのではないのです。
それでも自分に起きた事実がつらい。
なぜ自分に起こったのか理由が知りたい。
そんなあなたの心の側にいることが、グリーフケアだとわたしは思っています。
ただただ一緒に話を聞いてもらう。
ただただ共に寄り添ってもらう。

その経験と体感があなたには必要です。
あなたのその絶望感を共に話しましょう。
あなたのその無価値感を共に受けとめましょう。
あなたのその自己否定を共に受け入れましょう。
あなたと共に。あなたの側に。
安心して話に来てくださいね。