感情を失ったあなたへ。

死別は、もちろん環境の変化も大きいですが、精神面の変化というのも大きく揺れ動いています。

死に直面した時には直面したその時の悲しみがあるし、月日が経てば経つほどの悲しみがあります。

そしてその変化が周りから見て分かりやすいとは限りませんし、本人ですら気がついていないことがあります。

感情を失っていく理由

端的に言ってしまうと、感情の喪失は自分への関心を失ってしまうことから起こります。

大事な存在の死に圧倒され、その現実世界があまりにも耐え難くて、どうにかして抗おうとしても、何も変わらない事実を何度も突きつけられてしまう。

そうすると人は無力感でいっぱいになって、自分の気持ちを消そうとしてしまい、感じることを失っていくんです。

感情を失う。自分の気持ちが感じられないし、分からなくなる。

これは、喪失体験をしてからすぐに起こるものでも、しばらく時間が経ってから起こるものだと決まっているものでもありません。

悲しくてたまらないのに涙が出ない

何をしてもどこに行っても気持ちが動かない。

心の中が静まり返っていて全くの無の状態。

このように、自分の心が何も感じなくなったり、感情が動かなくなったり、何に対しても動じなくなったりします。

この状態になると、苦しかったり、痛かったり、悲しかったり、虚しかったり、怒ったり、そのようなつらさを感じなくなるので、自分としてはラクになったかのような気になることもあります。

けれど感情を失うことは、あなたがあなたとして生きていくことができないという大きな代償を払います。

大事な存在を失ったのだから、もう自分の人生も終わっている。

自分の人生を自分として生きていこうとは思っていない。

その気持ちも最もだと思います。

なので、無理にこの状態をやめる必要はありません。

感情を失っている方がまだ生きていける、という状態もわたしは知っています。

その状態を過ごしていく中で、ある時もしも今の自分に対して疑問を持った時に、自分に聞いてみてほしいと思っています。

「自分は本当に、今の生き方を心から望んでいるのかなぁ?」と。

今のあなたの大事な防壁

大事な存在と別れ、もう二度と会うことが叶わない。

その事実を受け入れることが何より苦しい人も居れば、その現実を生きることに絶望する人も居ます。

わたし自身の経験で言うと、わが子を失った事実を受け入れることに何より抵抗していました。

そんなはずはない。

これには何か意味があるはずだ。

今のままでは納得できない。

何とか自分の気持ちを丸く収めようと思っても、ただただあの子だけがいない現実に、あの子が居なくなっただけで他には何も変わらない毎日に、絶望し自分を無にして答えを探していました。

自分の生身で失った事実を確認して実感し、その悲しみや痛みや虚しさという自分から出てくる感情を味わうことに、もうこれ以上は耐えきれなかったからです。

今のあなた自身が、自分の感情を失うことで生きることで現実に対応しようとしているのなら、それは今のあなたにとって大事な防壁です。

本来、感情というのは様々で、喜びや楽しさといったプラスと言われる感情もあれば、悲しみ、怒りといったマイナスと言われる感情もあります。

感情はプラスだけ受け取ってマイナスは感じない、ということはできませんので、プラスを感じればマイナスも感じるし、マイナスを抑え込めばプラスも抑え込まれます。

今、自分の感情が分からないのは、1番の苦痛を避けるためにマイナスの感情を抑え込むことで、自分で自分を守ろうとあなたの感情を失わせているからです。

自分を無にすることで、これ以上傷つかないように守ろうと必死に頑張っています。

しかし、頑張れば頑張るほどに、あなたのプラスの感情も抑え込まれてしまいます。

なので残念なことに、感情を失うことでは自分を守ることができなくなる時がやがて来る人が多いんです。もちろん、わたしもそのひとりでした。

感情のスイッチを押す

思いがけずにあの時と同じ光景が目の前に広がった。

あの人が言った言葉を誰かが言っていたのを聞いた。

ふとした瞬間にあの日のことを思い出して涙が出た。

それは、今まであなたが無理に抑えて失くそうとしていた気持ちのフタが開く時でもあります。

言わば、あなたの感情のスイッチです。この感情のスイッチは、本来誰でもが持っているのですが、自分の中に入ってくる感情があまりにも多かったり大きかったりすると、自分では受け止めることができないので、触れることがないように切ってしまいます。

それでも、過去のあなたの気持ちと今のあなたの気持ちとが重なる瞬間が起こった時に、大きく深く揺れ動かされてしまいます。スイッチを切っている期間が長いほど、その反動も大きくなって自分に返って来るんです。

それは、あなたの心が出している「もうこれ以上は耐えられない」というサインでもあります。

その自分からのサインを受け取って、

何をあなたの心が今まで避けてきたのか。

何に対して拒否反応が出てきているのか。

何を受け入れたくないと感じているのか。

その本音を聞いていく時なのだとわたしは思います。

これまではどうやっても変わることなない大事な存在を失うという出来事に圧倒されてきたので、

自分自身を、

生きているのか分からない。

死んでいるのか分からない。

そのような状態にすることで、自分ひとりで自分のことを守ってきたのだと思います。

ましてや、社会の中で生きていくために、自分の本音を隠さないといけない状況も多くあったのだと思います。

人と話せるようになった。

働くことができるようになった。

行動を起こすようになった。

だからと言ってあなたの心が大丈夫だとは限りません。

話をしながら、働きながら、行動をしながら、あなたの心が何を感じているのかだ大事なのだとわたしは思います。

避けておきたい感じたくない自分の本音を、自分ひとりで探して見つけていくことはとても難しいことです。

相手という存在があるから、人は自分を感じることができます。

人と共に、あなたの本当の気持ちを見つけてあげてください。

失った自分が、これからどのように生きていきたいのかを一緒に探していきましょう。

あなたの感情のスイッチを押すことができるのは、他の誰でもないあなただけです。

スイッチを押した自分がどうなるのか怖い、その不安があるのは当然です。

そのために、わたし達が居ます。

あなたの感情は、コントロールするためにあるのではなく、共感し味わうためにあるのだとわたしは思っています。

怖い時こそ、不安な時こそ、ぜひグリーフケアをご利用ください。

安心してご相談くださいね。