人との別れには、ある日突然のものもあれば、段々と時間をかけてのものもあります。どちらの方がつらいかどうかなどはありませんが、喪失の状態においての必要なことは変わってくるように思います。
今回は、突然に愛する人を失った時に必要となってくることについてお話していこうと思います。
愛する人を突然失った人に必要なこと
愛する人を突然失う。
この状況に、なぜ?どうして?という拒否反応が出るのは人間の心理的な防衛反応です。そしてこの不条理な疑問の答えが得られないことから、長い混乱状態になる人も多くいます。
わたしの死産の経験も、突然でした。
つい週初めの検診では何事も問題なく元気に動いていた子が、週末にはもうお腹の中で亡くなっていました。原因がなく、お医者さんから今回のことは事故のようなものだとも言われ、わたし自身の理解を段違いで超えてしまったことから、自分に起こった事実を受け入れることができませんでした。
突然起きた別れを経験した人にとって、まず必要なのは心を癒すことではないようにわたしは思います。
まず必要なのは、
あの子は亡くなってしまった。
あの人はもうここには居ない。
これから二度と会える日は来ない。
その残酷なまでの起こった現実を見ることができること、認めることができることであり、自分は失ったという事実を認識することなのではないかと思っています。
突然の別れは特に、失ったことへの拒否反応や心を守ろうとする防衛反応により、喪失を認識することができずにグリーフの状態に入ることができないからです。
人は失ったから嘆き悲しむことができます。失ったことを自分が感じているからこそ喪失体験後の悲嘆反応であるグリーフの状態に入ることができ、その過程を歩むことによって自分と相手との関係性を見つめ直すことができるようになります。
グリーフの状態になれず、自分の傷を分かっていない時に、心を癒すことはできません。
かと言って、これはあなたの身に起こったことです。しっかりと事実を受け止めてください。と言われたところで、心がついていかず信じたくない気持ちが強いと余計に目を背けたくなってしまうものです。
自分を悲しませてあげること
ではどうすれば突然のこの地獄を受け入れることができるのか?と思いますよね。
人と人との関係性には、相手が存在します。
今までどれくらいの時間と想いを築き、込めてきたのかも存在します。
突然の別れというのは、この今まで確かに存在していたものとの様々な関係性が、一気に断絶されて壊れてしまうようなものです。
自分には何もできなかったという無力感と、崩れ落ちて修復不可能となり断絶された孤独感。
死産を経験した当時のわたしには、これを受け止めよと言われてもその声は届かず、呆然と立ち尽くすことしかできませんでした。
グリーフの状態に入ることも当然できませんでしたから、悲嘆反応を感じることもできず、あの子の生きた意味や起こったことの意味についてずっと模索する日々が続きました。
人間は本来、不安や恐怖を感じた時に自分の気持ちを安定させようとする働きを持っています。
けれど、出来事に圧倒されて自分に起こった出来事に対して逃避したままでいると、不安や恐怖を回避しているので安定させるための本来の欲求も回避してしまいます。
回避が続くと自分という存在をどんどん無にしてしまい、自分の気持ちや意識も消そうとして自分の存在の意味が分からなくなってしまい、自分で自分を追い詰めていくようになります。
突然の別れに愕然と立ち尽くしているあなたひとりで、そのあまりにもつらい事実を受け止めるのはそもそも無理があるんです。
人は理解できないことを悲しむことはできません。
突然の悲しすぎる出来事に、あなたは心から悲しむことができていません。
こんなのイヤだ。。。
どうしてこんなことに。。。
もう会えないなんて寂しい。。。
悲しむことができない自分を、まずは悲しませてあげることが必要です。
あまりの出来事をあなたが受け入れるためには、ひとりでこの事実に向かって行くチカラだけではなく、人のチカラが必要になります。
人からの支えを受け入れられるために
心が崩壊して穴が空いた時、人はその穴を何とか埋めようとします。
その突然の心の穴を動くことや、誤魔化すことで埋めようとしても、まずは穴があることを認識しないと自分がその穴に落ちてしまいます。
愛する人を突然失ってしまったあなたに必要なのは、心の癒しよりも先に、自分の失ったものに気がつき、その喪失体験が他の誰でもない自分の人生に起こったことなのだと受け入れられるようになることです。
自分の心の崩壊を知り、心の穴を見つめ、そこから突き上がってくるあなたの本音の感情や欲求と共に居ることができるようになることです。
その事実が耐え難くても、なぜ今の自分が穴を見つめることができないのか?と自分に繰り返し問うことです。
そこにはあなたが今までずっと抱えてきた過去からの心の穴が関係しています。
人に委ねることを知らないと、人から受け取ることができません。
人から受け取ることを知らないと、人に気持ちを出すことができません。
人に委ねるためには、人を信じるという体感が必要です。
愛する人を失ったあなたは、愛する人へと感じていた信頼感を知っているのではないでしょうか。
あの人という存在との関係性の継続は断たれても、あの人との間に育んできた信頼感は今でも確かに存在しています。
その事実を自分で受け取っていくためにも、人に話し、その気持ちを共感してもらい、受け入れていくという過程が必要なんです。
わたし自身も、
あの子のために。
あの子はこう望むのではないか。
あの子を悲しませないように。
あの子に安心してほしいから。
あの子の自慢の親でありたい。
そのようなあの子への信頼感や愛情でどうにか自分を立て直し、自分の人生の再生へと向かうことができるようになること経験してきましたし、悲しみが終わることはないとしても確かにここに存在した「いのち」を慈しむことはできるようにもなっていきました。
それでも。
だとしても。
これは周りや誰かから言われることなのではなく、あくまでもあなた自身の気持ちやあなたが何を感じたのかという感覚が大事なのだと思います。
あなた自身が実感しない限り、誰からのどのような言葉も想いも、受け取ることが難しくなり、あなたにとって何の支えにもならないからです。
だからこそ。
あなた自身が感じる気持ちを大事にできるように、突然の別れを、その心の痛みを見て、分かり、受け止めていくことに目を向けてもらえると嬉しいです。
あなたの感情は、あなた自身です。
あなたがあなたのために悲しみ、怒り、泣き、その気持ちを受け止めていけるように、この突然の別れの事実をあなたの人生に引き受けていきませんか?
ひとりでは難しいと感じる場合には、グリーフケアを利用してもらえればと思います。
どうぞ安心してご相談くださいね。