大事な人を亡くす。
大事な存在を失う。
喪失が起こった時に人が感じる感情は、とても言葉では言い表せないほど様々な気持ちがあります。
言い表せなくても、それを誰かに聞いてほしい、この気持ちを分かってもらいたい、そう思うのは人間の本能だと思います。
たくさんの想いを言わずにいるのには、その本能を抑えてしまうほどのあなたにとっての理由があるからだと思います。
弱さを見せられないのは
喪失体験後の悲嘆反応であるグリーフは様々です。
悲しみ、寂しさ、虚しさ、不安、
悔しさ、怒り、憎しみ、惨めさ、
自責、罪悪感、虚無感、後悔、
そのような次から次へと出てくるやりきれない気持ちを、どこにも出せないという方が多いのはナゼでしょうか。
自分の気持ちを自覚するまでに時間が必要な方もいれば、自分の気持ちを自覚していても周りに話せない方もいます。
家族や友人や職場の人にも自分の本当の気持ちは話していないという方は、結構多いと思います。
家族に対しては、同じように喪失の痛みの真ん中に居て苦しんでいる家族を毎日のように目の当たりにすることで、心配をさせたくなかったり、不安にさせたくなかったりする気持ちから、自分だけが弱さを出すワケにはいかないと感じて自分の気持ちを言わなかったり、
友人や職場の人に対しては、聞いても相手の気持ちが重くなり何も言えないだろう、相手の日常にもきっと大変なことや都合はあるだろう、と負担をかけられない気持ちから、自分の弱さを見せられないと感じて大丈夫なフリをしたりして、誰にも相談できない、と自分の中に不安や恐怖心をためていってしまいます。
それでもあなたの経験した大事な存在との別れという喪失体験は、
あなたよりももっとつらい人がいるかどうかや、
今までに人の死を実感したことがあるかどうかや、
愛情の大きさや深さで乗り越えていけるかどうか、
といった周りと比較する体験ではなくあなただけの特別な体験です。
他の誰でもないあなたにとって大きく深い体験が、あなたの感じている喪失体験なのだと思います。
この喪失があなたにとってどれほどの体験なのか、があなたにとっては大事なことです。
それなのに、どうしても周りの反応や状況を気にしてしまうことが、あなたが今のつらい状況にも関わらず、自分の弱みを見せられないし出せないと感じてしまう理由のひとつだとわたしは思います。
今、あなたが弱さを見せられないのは、誰かのために強くあろうとした過去とそれを信じて自分に対して強くなれ!と無理に言い続けている今があるからかもしれません。
弱みを見せられない原因は
弱みを見せられない、出せない自分がダメなのではないんです。
見せたくないし、出したくないとあなたが感じるのであれば、それは無理に見せるものでも出すものでもありません。
ただ、この弱みを見せられない。出せない自分がつらい。と感じているのに周りのために強くあろうとする自分がいるのであれば、あなたはこの喪失体験を通して、今までの自分が当たり前だと信じてきた思い込みに気がつくキッカケをもらっているのだと思います。
グリーフは今だけの反応のように見えても、幼少期からの愛着が大きく影響しています。
人は、もらった愛着を基盤に人との人間関係を形成するからです。
愛着は、自分の安全基地であり、帰る場所とも言えます。
人と繋がる時の安心感
人に守ってもらう安全感
そこから
自分を自己受容できるようになり、自己肯定感や自己重要感が育っていき、他者受容や相互受容が育まれます。
喪失体験で起こるグリーフは、この愛着の土台が大きく揺り動かされる経験です。
喪失体験や死別によって、愛着という自分にとっての生命線ともなる絆が断絶されたと感じ、自分自身そのものが根本から揺らいでしまうからです。
この愛着の土台が薄かったり脆かったりするほど、ひとつの喪失体験が自分自身の存在意義や価値の喪失へと繋がっていってしまう危険があります。
まさに、自分だけが弱くなれないというのは、あなたの幼少期の愛着の弱さや脆さから来ているのかもしれません。
愛着の土台を強くするには
けれどそれは嘆くことではなく、
幼少期の自分の心の傷や
幼少期に信じた思い込み
に気がつく機会をこの喪失体験からもらった、とも言えます。
失う経験をしてあなた自身が揺れ動くことで、今までの自分が無かったことにしてきた傷、避けてきた記憶、思い出したくない言葉や経験、乗り越えたはずのトラウマ、そのような自分にとっての弱さと言えるような出来事が次から次に浮かんできたり、思い出したり、蘇ってきたりします。
元気だった人が一気に落ち込んでしまったり、よく話をしていた人が人付き合いそのものを避けるようになったり、穏やかだった人が何かをキッカケに怒りやすくなったりしてしまうのは、この喪失体験により愛着の土台が揺れ動いて、過去の傷やトラウマを抑えるチカラが弱くなってしまっているからです。
喪失体験以前と全く変わってしまったと感じる方が多いのはこのためです。
これは誰にでも起こることではありますが、自分ひとりで対応していくことはとても難しいことだと感じています。ここには、必ず人のチカラと自分のチカラを合わせることが必要になります。愛着の土台が脆ければ尚更です。
大事な存在を失い、世界との断絶と孤独感の間で揺れ動きながらも、人に聞いてもらい、人に分かってもらう経験をすることで、新たな価値観や考え方の獲得、人との繋がり方や絆の結び直しを人は始めていくからです。
もしもあなたが、
自分がけが弱くなってはいけない。
自分の弱さを見せたれない、出してはいけない。そう感じているのなら、
弱さを出せない自分が、自分だけで抱え込まず周りをどうやって頼っていくのか。
今に適応していくこと、幸せになっていくこと、をどのように自分に許していくのか。
それをこの喪失体験から問われていると思って自分に問うてみてください。
あなたに必要なのは、傷を癒すだけではなく、幼少期からの傷や思い込みを愛着と共に再構築していくことなのかもしれません。
自分の今だけではなく、過去の傷にも向き合うキッカケを、この喪失体験はあなたに伝えてはいないでしょうか?
グリーフケアには喪失の傷を癒すだけでなく、繋がりや絆の紡ぎ直しという意味もあるとわたしは思っています。
傷を消し去るのではなく、その傷と共に新たな繋がりや絆をどのように紡ぎ、結んで関係性を繋ぎ直していくのか。
その紡ぎ直しをあなたと共に見つけ、分かち合っていけたらと思います。
そのためにまず、あなたの弱さを話してみませんか?
安心してご相談くださいね。