思い出すのがつらい。
できれば忘れたい。
人にはそのように感じる経験が確かにありますよね。
喪失体験をした方にとっては、なおさらそのように感じることもあるのではないかと思います。
思い出すのがつらい理由
失った愛しい存在を思い出す時というのは、
「それが苦しくもありながら、温かなぬくもりを感じる時」でもあると思います。
反対に憎しみを感じる存在であれば、思い出そうという気持ちになかなかなりにくいので、思い出すことそのものが苦痛にならないかもしれません。
喪失体験をして、その失った存在を思い出すことをあなたがつらいと感じるのは、
その存在そのものは大事に想う気持ちを抱えながらも、その存在に伴う記憶につらい感情を抱えている状態が本当は今も続いているからなのではないかと思います。
それは、あなたがそれほどその存在との関係性に対して、
愛しいけれども嫌い。
求めているけれども憎い。
好きなのに恨んでいる。
というような相反する気持ちや葛藤などのとても複雑な想いを抱えていたということでもあると思います。
特に死別となると、その存在を失ったことにより一方のポジティブな気持ちばかりを優先したい想いが出てくることにより、自分のネガティブな気持ちの方を封印しようとしたり、無理やりポジティブな意味づけをして自分を納得させようとしたりします。
それほどまでに、あなた自身の失う以前での傷がそもそも深く大きいものであるということですが、家族や近しい間柄などの関わりを断つことができないという関係性にあると、事あるごとに思い出す相手、忘れることもできない相手との間にずっと傷ついているにも関わらず、その傷を無かったことに消そうとしたり、思い出す度に本当は苦しくなる自分のことを責めてしまったりするので、思い出すことがずっとつらくなってしまいます。
このように、複雑な気持ちを抱えている失った存在に対して思い出すことがつらくなってしまうので、そのように感じてしまう自分を責めてしまいがちにもなったりするのですが、人は相手に対して複雑な想いを抱えていることは、実はよくあることだともわたしは思っています。
愛しいだけではない。
憎しみだけではない。
そのような複雑な気持ちを抱えている存在に対する喪失体験では、相手との関係性をどうにかポジティブに繋ぎ直そうとするよりも、まずは相手ではなくあなたがあなた自身を見ることが大事になります。
あなたにとってのグリーフケア
自分を理解することを言葉通り自己理解と言いますが、離別や死別やアイデンティティクライシスで心に傷が深い状態の時には、特に自分自身のことより相手や対象に対しての関心や想いが全面に出ます。
そしてそれが失った後のあなたの揺らいでいる心の支えになっていることも多いものです。
なので、自分よりも相手や対象を見ていたい自分がいることはとても自然なことですし、あなたの情熱や愛情をその関係性との繋がりで感じていたのだと思います。
けれど一方で、相手や対象のことを早く忘れたいと感じる別れも確かに存在します。
それはあなたの幼少期と関係していることが多く、喪失した相手や対象があなたにとって、近い存在であったにも関わらずその関係性を思い出したり、その繋がりを思い返したりする時に、その度にあなた自身がとても苦しくつらくなる場合、
グリーフケアで喪失の傷を見ることはできても、対象との関係性をつなぎ直すことに対しては本音では拒否感や嫌悪感や抵抗感を感じることは当然だと思います。
そして、失った存在に対してそのように思ってしまう自分に自責の念を感じることも多いため、その本音をなかなか誰かに対して言うことができなくなります。
その自分のことを、どうか責めないでください。
グリーフケアは、全ての関係性においてポジティブな関係性だけの繋がり直しに向かっているワケではない。とわたしは思います。

それはあなたが失ったその存在と、どのような関係性であったかでそれぞれ違っていいものです。
違いをよくないものとするのではなく、違いがあるからこそ理解は深められます。
例えば失った存在に対して、虐待やいじめやネグレクトなどで思い出すことが苦痛となるようなネガティブな気持ちを抱える場合など、繋がり直すことがあなたをより苦しめているなら、自分からその存在を離すことであなたが繋がりを許せる距離感を新たに見つけていくこともグリーフケアだと思います。
あなたの心地よい関係性を見つけること
失った関係性、もしくは失う可能性のある関係性で、その相手や対象に対する感情は愛しいだけの気持ちだけでなく、憎しみの感情も伴うことはあり、思い出したり考えていると、つらく苦しいネガティブな気持ちになるのなら、その関係性の繋がり直しは、
「相手や対象との距離を広げる」という関係性の見つめ直しが、あなたの心を軽くすることはあります。
その場合、
喪失に無理に意味を求めない。
ずっと繋がり続けるよりも、必要な間隔や距離を選び直す。
ということを、あなたの関係性の繋がり直しにするといいとわたしは思います。
その失った存在との関係性や想いは、あなたが自分を色々な方向や角度で見ていくことで見えてくることが多いものです。
あなたがあなたの本音とつながり直すこと。
あなたが相手との納得のいく繋がりを見つけること。
あなたが相手との距離を心地よく感じる関係性を広げること。
これを新たに見つけていくのもグリーフケアの役割です。
どうしても受け入れられない気持ちというのは、あなたの叶わなかった過去や、傷ついた幼少期の傷が、今でもあなたの心の中で存在しているからです。
時を重ねてきた分だけ、より強い思い込みや深い傷となって、あなたの心に疼いているのかもしれません。
まずはあなたの、今まで言えなかった想いや過去に閉じ込めた記憶を、誰かにそのまま聴いてもらい、あなたのそのままの気持ちを受け止めてもらってください。
その経験の中で、あなたの本音を見つけ、望む繋がり直しや心地よいと感じられる関係性の距離を見つけていきましょう。
その愛しいだけではない距離を取りたい関係性に、無理に意味を求めたり、ポジティブな意味を自分に押し付けてしまわないことも、とても大事な繋がり直しです。

思い出すことが自分の心の支えとならない場合、繋がりや関係性よりも、自分に取っての心地よい距離感を探していくことがグリーフケアとなります。
そのような思い出すのがつらい複雑な関係性を抱えているのなら、あなたが自分の心の中だけにどうか留めてしまわないでくださいね。
どうぞ安心してご相談くださいね。