喪失体験をすると、自分の気持ちや自分自身を受け入れていくことがとても大切になりますが、グリーフの状態、つまり自分の気持ちに自分が大きく揺り動かされている時に、無理に自分を本音を探し出し受け止めようとすると、心に大きな負荷がかかってしまうことで、より一層あなたの心が不安定な状態になることがあります。
今のあなたに必要なこと
生きづらさを感じる人にとって、自分自身を見つめ、受け入れていくことは避けては通れないプロセスだと思います。
生きづらさを感じる時というのは、今の目的地があなた自身の本音とズレてしまっていることが多いんです。
なので新たに目的地を考え直したり選択し直すことが必要になります。その考え直したり、選択し直す時に必要なのが自分で自分を受け入れていく自己受容の過程です。
けれどグリーフの状態にある時は、その目的地へと向かっている時に、突然に天変地異の大きなハプニングに見舞われるような状況で、目的地がどうこうとすぐに出来る状態にありません。
その時の状態や状況により、今の自分に必要なものというのは変わってきます。
例えば、あなたが超多忙の毎日の中に1日だけ休暇が取れて、某ネズミーランドに向かっているとします。あなたはその日のために、貯金をしたり、アトラクションを調べたり、お土産をピックアップしたりと、色々な下調べや準備をしたり、計画を立ててきました。
ところが向かおうとしたら、いきなりのゲリラ豪雨が来ます。傘があっても意味はなく、強い雨風で前も後ろも分かりません。止む気配も全くありません。
このゲリラ豪雨に見舞われている状態こそが、喪失体験をしてグリーフの状態にある人の状態です。
ここでゲリラ豪雨に打たれたままで飛行機の便をキャンセルしたり、一緒にいく友人に連絡したり、行き先を変更したり、ということをゲリラ豪雨の中で行う人はいないと思います。
まず、この時に必要なのは「雨宿り」です。
いま必要なのは避難すること
激しいゲリラ豪雨にイキナリ遭遇したら、その場しのぎだろうが何だろうが、まずはゲリラ豪雨から避難することが先です。
人は、あまりにもつらい現実が目の前に現れると、その事実を受け入れることができずにまずは自分の心を固めて動かないようにして、心が揺れ動くことから避難します。
すぐに目を向けよう、向き合おうとしても、心がそれに耐えきれず、自分が壊れてしまうことから守っているんです。
この時期に自分の本心を感じたり、探したり、受け入れようとすることは、余計にあなた自身を大きく揺るがせてしまうことになり、心の器が壊れてしまう可能性があります。
自分を受け止め受け入れる器がヒビだらけで壊れそうな時に、より大きな衝撃をその器に与え続けてしまえば、いずれ器は壊れてしまいますよね。
起きた出来事に圧倒されあまりに心が揺れ動いている時期には、衝撃を与えないように避けることが、その器を守ります。
まずは安心して衝撃を避けられること、傷ついた心にもゲリラ豪雨から避難できる雨宿りの場所が必要なんです。
大きく強い雨風が過ぎ去ってくれるまでの間、あなたがこれ以上濡れないでいいような、暑くも寒くもなく誰からも何も言われない避難場所が必要です。
この安心な避難場所を見つけ、しばらくそこで渦中が過ぎ去るのをどうにか待ち、激しいゲリラ豪雨をしのぐことができてからようやく、今の自分が目指している目的地を考え直したり、客観的に見たり、諦めたりすることができるようになります。
雨宿りをしている時には、どうして自分がこんな災難に、とか、せっかくこのために今まで頑張ってきたのに、とか何とか行ける方法はないだろうか、とか、色々なことを考えます。
その中で、雨宿りをしながら入ったお店のパンケーキが美味しかったり、探していた本がちょうど見つかったり、時間潰しに入った映画にとても感動したり、目的地とは別のことをしたり、考えているうちに、段々と目的地が変わってきたりします。
誰かと共に自分に向き合う過程がグリーフケア
グリーフケアも、最初の段階はこの雨宿りのように避難場所であるとわたしは思います。
避難し、あまりの痛みをどうにか避けながら、今の心の雨風をどうにかしのいでいく。
そして痛みや苦しみから避難して、何とか共に在りながら日々を過ごしていきながら、ようやく自分の気持ちに目を向けられるようになります。
目的地を再構築できるようになるのは、最終的なところです。
最初からこれはできませんし、ずっと避難場所に居るままでもあなたの心は落ち着きません。
あなた自身も、生まれていきなり歩いたということはないように、心にもその時期に応じて必要なものがあります。

そして転んだ時こそ、人の助けが必要です。
特に喪失体験のようにあまりにも大きく転んでしまった時には、自分自身の立ちあがろうとするチカラだけでなく、誰かがそっと支えてくれるチカラの両方があなたを助けます。
それはただひたすらに前を向いて進み続けることでも、ずっと下を向いて止まっていることでもありません。
自分にないと思っていたものがあることに気がつくこと。
自分にあると思いたいものがないことをあきらめること。
そのどちらもあなたにとって必要な過程です。
自分にとってかけがえのない大事な存在を失った時、あまりの事実にどうしようもなく自分を見失いながらも、時にはそのひとつひとつのあなた自身の側に在り、苦しすぎる時にはそっと距離を置いたりしながらその痛みから避難する。
そうやって少しずつ、これは自分に起こったことなのだと事実を受け入れていけるようになる。
その誰かと共にあなた自身に取り組んでいく過程がグリーフケアだとわたしは思います。
あなたが安心してあなた自身を受け入れていけるように、あなたの側であなたがあなたの痛みを共に受け止め続けるのがグリーフ専門士です。
どうぞ安心してご相談くださいね。
