ワタクシ、現役の保育士でもあります。
先日、園で年長さんの子と話しておりました。
その時、対面ではなく同じ方向を向いて話していました。
するとその子が突然、「せんせい、だっこして!」と言うものだから、咄嗟にわたしも
「はいさ!だっこ!!」と同じ向きのまま手を回したんですが、すかさずその子が
「チガウ!これはおんぶ!!!」と言うではありませんか。
喪失感の相互性
わたしからすると、お腹の面に子どもがいるからだっこなんですが、その子からすると、背面にわたしが居るので自分がおんぶしている感覚なんです。
ふたりで同じことをしていてもそれぞれ見ている側面が違う。
それは喪失体験でも同じことだと思います。
大事な人。
一緒に暮らしたペット。
情熱を注いだ仕事。
喪失対象は人だけとは限りません。
そのあなたの大事な存在を失ってしまったことで、これほどまでにあなたに大きな傷を与えるのは、あなただけではなくその大事な存在とあなたが、
互いに想い合い
互いに必要とし合い
互いに求め合った
という確かに存在した時間があなたにあったからではないでしょうか。
失ったことで自分が自分でなくなる。
そのような深い喪失感は、互いに行き来した愛情や情熱があったからこそあなたに起きていると思うのです。

この相互性こそが、あなたの喪失感をより強めてしまいます。
わたしは、喪失感との付き合い方にも相互性はあると思っています。
あなたが喪失感の大きさに耐えきれず
次々に予定を入れたり、
休む間もなく仕事をしたり、
人に絶え間なく会ったり、
そのように、自分から世界を求めることで喪失感と折り合いをつける場合。
または、
喪失感の深さに耐えきれず
自分の世界に閉じこもったり、
周りとの関わりを断絶したり、
人が怖くなって関わりを避けたり、
そのように、自分と世界とを断絶することで喪失感から守ろうとする場合。
どちらの場合も、あなたの心の比重がどちらかに大きく傾いているということがあなたを苦しめていることがあります。
反対側をやって避難する
どちらかに心の比重が傾いてしまうことは、あなたの心の弱さではないんです。
失った存在から愛されていただけでなく、あなたも愛していたということであり
失った存在を愛していただけでなく、あなたも愛されていたということだからです。
それはどちらか片方だけがあなたに存在していたのではなく、どちらも存在していたからあまりの喪失感に圧倒されているのだと思います。
そして、どちらかに心の比重が傾いている場合、それほどまでに反対側の喪失感の傷や穴が大きく深いということです。
世界を求めているのならその反対側にある孤独が、
断絶を求めているのならその反対側にある繋がりが、
今のあなたにとって怖くて怖くて避けてしまいたいほどつらくてたまらないのだろうとわたしは思います。
そして無理にその反対側に向き合い受け入れるよりも、反対側をかわす時もあっていいと思うんです。
もしも今のあなたが、ひとりで居られないほどに動き回っているのなら、読んだり観たりして時には自分の時間を作ってみる。
ひとりの世界にずっと居るのなら、どうにか関われそうな人や世界など気持ちを紛らわせそうなものをたまに取り入れてみる。
そのように、あえて今の反対側を少しだけやってみる時間をや場所を工夫してみて、つらさや苦しみをつらさをしのぐ時もあっていいと思います。

喪失はあなただけの特別なもの
そのためには、今の自分がどの状態にあるのか。
それをあなた自身が自分で分かっておくことが大事です。
今の状態にある自分を
悲観したり
焦ったり
否定したり
そのような状態になることは当たり前のことです。
当然の時だからこそ、今の自分の状態を自分が知ることで、その今の自分の反対側も知ることができます。
そして今の自分喪失感の反対側を知ることで、その状態になる時に、自分で自分のことを捨ててしまわないようになり、ひとりでずっとその場所に留まり続けなくなります。
その喪失感の相互性を知っておくことは、あなたが自分の喪失感から追い詰められてしまわないように、あなたを守るお守りになります。
あなたからの愛情も、喪失対象からの愛情も、あなたの中に確かに存在したからこそ、満たされた喜びも、失った悲しみも、あなたの心に存在しています。
あなたにはあなたの、あなたにしか分からないグリーフがあります。
それはあなただけの特別なものです。
その特別な体験を覚えていたい時も、忘れてしまいたい時も、どちらもあなたの中に存在していいんです。
特別なものだからこそ、分かってくれないことに「わたしの気持ちは誰にも分からない」と腹立たしさを感じるし、分かってくれることに「わたしの気持ちが分かってたまるものか」と反発を覚えることもあるでしょう。
それでも、あなたを分かろうとする人が存在することで、あなたを自分自身の喪失から救うこともあります。
あなたの喪失感の反対側。
自分を捨ててしまいそうなら、誰かと共に自分を留まってみたらいいし、
ひとりで追い込まれてしまいそうなら、誰かと共に相手を受け入れてみたらいいとわたしはそう思います。
そして、それをあなたひとりだけでやらなくていいんです。
そのためにグリーフケアはあります。
どうぞ安心してご相談くださいね。
