今までの自分の全てで大事にしてきたもの。信じてきたもの。守ってきたもの。
それが音を立てて崩れていく。
そのような自分の価値観が崩壊するアイデンティティクライシスが起こった時、人はどのようにしてその自身の価値観の崩壊を受け入れていけばいいのでしょうか。
アイデンティティクライシスが起こったら
アイデンティティクライシスが起こった時に、人が呆然と立ち尽くし、これまでの自分の存在意義やこれからの自分の存在価値を見失ってしまうのは当然です。
この、今までの自分の生きる中心を見失い自分自身を失ってしまうことがアイデンティティクライシスというグリーフとなります。
このアイデンティティクライシスが起こった時に、そこから人はどのように立ち上がっていくと思いますか?
先日見た朝ドラで、主人公が亡くなった夫が残してくれた速記のノートを解読する場面がありました。
主人公の母親はこの子はやりたいことが見つかると真っ直ぐにやるから、と安心したように言っていました。
わたしは個人的に、この亡くなった夫のノートの解読は主人公にとっては「失った夫の想いとの心のやりとり」をしていたのではないかと思っています。
失った大事な存在が行なっていた行為を学んだり、覚えたり、実際にやってみたりしていく中で、亡くなった夫との繋がりを感じていたのではないかと思います。
わたしは、グリーフを経験した方にとってこれはとても大切なことだと思います。
アイデンティティクライシスが起こってしまった時に、失った大事な存在との間の関係性を焼き直ししていたり、過去にしがみついているように周りから見えることも多くあります。
けれどそれは失った本人にとって
喪失対象との関係性の変化
喪失対象を失った事実
喪失対象からの贈り物
喪失対象との絆の確認
というような失ってしまったものとまだ失っていないものを分ける心の作業をしている時になります。
その心の作業の繰り返しが、失った大事な存在と自分との新たな関係性を見つけていくことへと繋がっていくんです。
心のお守りと支え
その関係性の繋がり直しは、これからの自分の人生を大きく変化させるような何かである必要などありません。
失った存在の想いを受け継ぎ自分のこれからの人生で行う。
失った存在をお守りに心の支えにして生きていく。
また会えることを信じて自分はその時まで生き抜く。
あの人だったらこうするだろうとあの人を自分の心に生かしていく。
このように、今までの関係性とは違った自分の心の支えやお守りとなる関係性を紡ぎ直すことこそ、失った大事な存在とあなたの間で生まれる新たな関係性の繋がり直しとなります。
そしてその関係性の繋がり直しは、あなたの生きていく中での希望となることが多くあります。
どのような形であれ、あなたがあなた自身でその関係性の繋がり直しをやっていくことは、絶望の底にいた自分にあなたが希望を見せることだと思います。

あなたが自分に見せる希望こそ、アイデンティティクライシスが起きてしまったあなたに何より必要なものだとわたしは思います。
ただ、この時に気をつけてほしいことがあります。
この深いグリーフの状態の時にあなたの見つけたその希望は、溺れた時に掴んだ藁である可能性もあります。
それは自分だけのチカラでは分からないものだと思います。
今の自分の手に握っているものが希望か藁なのか、その時に必要なのは客観性だからです。
主観的に感じている自分をそのまま受け入れてもらうことで、客観的に自分のことを見ることができるようになります。
アイデンティティクライシスがあなたの心に起きた時も同じです。
崩壊からの希望
大きく躓いた時は、あなた自身からと、あなたの周りからと、両方からの支えが必要です。
自分自身の支えが弱っている時は、まず周りから支えてもらうことがあなたが自分をケアすることに繋がっていきます。
失った存在との関係性に、自分なりの繋がり直しの希望や心のお守りや支えを見つけていくこと。
そして、その新たな紡ぎ直しを客観的に見ることができるようになっていくこと。
あなたの希望は、あなたが見つけるあなたなりの自分への光です。
これは、誰かに見せるものでも、分かってもらうものでも、認めてもらうものでもなくていいんです。
崩れた自分のカケラから、これからの自分にとって大切なものを探し拾い集めるためにグリーフケアはあります。
崩壊したあなたのアイデンティティは、あなた自身を再び生きるための大きな希望となります。
それを自分ひとりで探し見つけていくことは、とても傷ついたあなたの心を疲れさせてしまいます。
ぜひ、誰かと共にあなたの元へと返してあげてください。
あなたにとって、グリーフケアがそのひとつの選択肢となりますように。
どうぞ安心してご相談くださいね。
