心の傷が疼くあなたへ。

喪失体験でのつらい体験。

年月が経ってきたことで大丈夫になってきたと思い込んだり、自分の中では区切りをつけたつもりでも、ふとした拍子に蘇ってくる記憶や感覚。

そのふとした瞬間に、心の奥が痛んだり、あの時のあのかなしみを思い出したり、あの人の顔が思い浮かんで嬉しくも切なくもなったり、そのような体験をされた方は多くおられると思います。

消えない心の傷。

喪失体験であまりの驚きや衝撃、悲しみや痛みにといった気持ちや感覚が一気に押し寄せると、人はその経験そのものに適応することが難しく、圧倒されて固まってしまうことがあります。

それは心の緊急避難のようなものでその時の自分を守るために必要なことです。

緊急避難の間に、気持ちを分かってもらったり、誰かと共に整理できたり、本音を言えたりすることで、そのつらすぎる体験を自分に起こったこととして、段々と適応できるようになっていくのですが、

そのままその体験を忘れようとしたり、自分の中から消そうとすると、それが心の傷となりずっとあなたの心の中に残り続けることがあります。

そして何より、喪失体験をしたことであなたの過去の心の傷が、思い出されたように蘇って来ることがあります。

あなたの心の傷のとなるような心に強く影響を与えている経験は、思い出すことがつらく不快なので普段は冷凍保存してあります。

常日頃から思い出していたり、その心の傷を思い出して飲み込まれるようなことがあると、自分の生活そのものが送れなくなってしまうほどに心が揺れ動いてしまうからです。

だからこそ、生きていくためにその心の傷を瞬間冷凍して固めておくことで、自分自身の心を守ろうとします。

それでも、その冷凍保存がふっと解凍されてしまう時があります。

わたしが思うに、それはどうやら2つの場合があるようです。

心の傷が解凍される時。

ひとつは、先ほどお話ししたように

トラウマに繋がる思い出

目に映った景色や場所

そこに伴う経験や体感

などによって、心の傷に繋がるようなスイッチが入った時です。

側で大きな音がした時に幼少期の両親のケンカを思い出す。

トラウマを経験した場所に再び通りかかった時に震えが止まらなくなる。

目の前の人が怒り出した時に意識が段々と飛んでいって固まる

このように、視覚や聴覚や体感覚から過去に起こった恐怖の出来事が溢れ出てきてしまうのは、心の傷が解凍されている時です。

これは、自分の中ではまだこの心の傷の解凍を認めていないので、心の傷が出てこようとしては何とかして出てくることを抑え込もうとします。

疼いている心の傷を見ることよりも、揺らがない自分の心を求めているので、心の傷は再び冷凍されることもあります。

そして心の傷が解凍されるもうひとつが、自分のことを分かってくれる人に出会った時です。

今まで頑なに閉ざしてきたあなたの心の傷をそのまま受け止めて、あなたの存在そのものをそのまま受け入れて大事にしてくれる人。

そのような人に出会った時です。

自分をそのまま受け入れてくれる人の存在に出会うと、人は心が動くと同時に、心の傷も心と身体に浮上してくることが多いとわたしは思います。

冷凍してきた心の傷は、この場所では、この人には、この時間は、話しても大丈夫だという心の安心のスイッチが入ると、再度自分の中でゆっくりと解凍され始めるからです。

心の傷は解凍されたその後がとても大切で、怖さを人から受け止めてもらい味わったかなしみや寂しさや絶望感を自分自身に感じることを許してあげるという体験を共にすることが必要になります。

その誰かにもらう安心体験の繰り返しで、心の安心感が育まれていき、自分への信頼感も築かれていきます。

そのように誰かにもらい、それを自分の中で育み育てていくことで、あなたが自分自身や事実を受け入れていけるようになっていきます。

その自分への安心を、人と共に感じられる経験が必要だとわたしは思います。

心の傷との向き合い方。

寝た子を起こすな、ではないですが、トラウマが冷凍保存されている方が、大きく心が揺れ動かされることがないので安心して過ごせると感じるかもしれません。

確かに心の傷は、無理に解凍する必要などないと思います。

冷凍保存された心の傷を抱えたままであっても、今のあなたの日常生活に問題がないのであればそのままで構わないとわたしは思います。

けれど喪失体験を経験してから、

怖いと自分の意識を飛ばす。

何かの場面で自分が固まっていく。

ふとした拍子に動機や震えが出る。

そのような影響があなたに出ているのであれば、あなたの過去の心の傷が解凍されてきているのかもしれません。

そして、その自分に対して嫌悪感を抱いたり、何かに依存して自分を保ったり、と自己否定を強めていくことも多くあります。

心の傷を持つ人にとって大切な存在を失ったことで自分の傷ついた過去に気づき、人との信頼関係を築くことで大きくその体験の意味を変化させていくということはよく起こります。

過去の心の傷に気がつくと、自分で自分を守ることがとても難しく思えます。

だからこそ、あなたを大切にしてくれるその存在が必要になるとわたしは思います。

人は、自分を大切にしてくれた存在が受け入れて信じてくれた自分を感じることで、自分という人間を大切に想う気持ちを知ることができます。

あの人が受け入れてくれて信じてくれた自分だからこそ、その自分のことを大切にしようと思えるようになるという一面も持つからです。

あなたが今、喪失体験をしたことで自分の過去の心の傷に気づいたなら。

ふとした瞬間に、心や身体が大きく反応しているのなら。

どうか、その心の傷をこのまま抑え込んでまた冷凍してしまわないでください。

揺れ動くあなたの心そのままを受け入れて信じてくれる人を、求めてみてください。

その不安と怖さに助けを求められなかった過去のように、ひとりだけで耐え自分だけでガマンするのではなく、あなたと共に在る存在にぜひ助けを求めてみてください。

そして、あなたがあなた自身を受け入れて信じていくことを感じてみてください。

もちろんグリーフを経験した方は、まさにその自分を受け入れて信じてくれる人を失ったという方も多いですし、反対にそのような存在が自分の側に居たことはないと言われる方もいます。

あなたの側にその存在が居ないからこそ、あなたにはあなたを受け入れて信じてくれる存在が必要な時です。

そのひとつとして、グリーフケアはいつもあなたと共にあります。

誰かに自分を大切にされることで、自分で自分を大切にすることが始まります。

あなたがあなたをもう一度大切にするために。

どうぞ安心してご相談くださいね。